再現性のある食品分析を実施するためのマニュアル

食品分析は食の安全を確保するために重要な役割を果たしています。その方法は再現性を維持するために統一されている必要があります。そこで重要となるのが行政からの通知や業界のルールとして発出されるマニュアルです。

それぞれに規定されている基準や方法に従って実施することで、適切に比較し判断することが可能になります。

(食品分析マニュアルとは)

食品分析の目的

店頭で販売されている食品に何が使われているか、素人が正確に知ることは困難です。特に海外から輸入されたような場合では、日本とは異なるルールで製造されている恐れもあり、不安を感じることがあります。万が一、身体に悪影響を与えるような成分が含まれていたら、健康被害の原因となってしまいます。

また食品の有効期限や消費期限は、使用されている成分によって変わってきます。そのため適切な期限を設定するためには、何が使われているのかを把握することが重要です。そのような食の安全に関わる根拠データを取得するために成分を把握することを目的として行われるのが食品分析です。

法律の規制から成分を分析することもあります。食品表示法では栄養成分の表示が必要です。具体的には熱量、タンパク質や脂質、炭水化物と食塩相当量などで、食物繊維や飽和脂肪酸が推奨項目として設定されています。これらの表示は健康に大きく影響を与えることから表示が必要とされています。

それ以外でも商品の特徴として低塩や低糖を掲げる物もあり、その根拠として分析による正確なデータによる比較が行われなければいけません。事実と違う表示を行えば、最悪の場合、健康を害する事象の発生が考えられます。

このように食品分析は食の安全を確保するために必要です。

(栄養成分が分かる食品分析の仕事内容や食品衛生監視員に必要なスキルなどを詳しく解説)

食品衛生法による食品分析

食品衛生法は国内で流通する食品の安全を確保することが目的の法令です。そこでは有毒な物質が付着、含有しているようなものや病原微生物が原因で汚染されたもの、金属片など異物の混入しているようなものを製造も輸入もしてはいけないことになっています。

ただし製造中の不慮のミスによって起こってしまうリスクは完全に排除することは不可能です。そのような健康を害する食品かどうかは、完成品を食品分析を行わないとわかりません。この法令で設定された基準では、食品の中に残留農薬や放射線物質、有害物質が含まれていないか、微生物による汚染が発生していないかを判別することができます。

また、輸入品では日本とは異なる基準で製造されていることもあり、逸脱している成分がないかを確認することも可能です。これらの食品分析は製造者の判断した方法で自由にできるわけではなく、法で規定された方法に従って行わなければいけません。

分析方法が統一されていないことや再現性がないことで適切な判断ができなくなるからです。使用する検査機器も測定に適した仕様のものを使う必要があり、それらを正しく実施できる人材もなくてはいけません。すべてが計画通りになることで正しいデータを取得することができます。

その方法は、厚生労働省が発出する通知などによって規定されています。

(食品分析や検査について)

栄養成分を測定する食品分析

食品の栄養成分を調べるときに使われる指標が、日本食品標準成分表分析マニュアルです。最新版は2020年に発行された八訂で、国際連合食糧農業機関や国際食品データシステムネットワーク が推奨する組成成分に換算係数をかけて算出する方法でエネルギーを算出されるように変更されています。

計算方法は単純で、それぞれの組成成分量であるグラムごとに設定されたキロカロリーをかけた結果を積算するものです。例えばアミノ酸組成によるたんぱく質では1gあたり4キロカロリーになります。日本食品標準成分表では、食品群ごとにそれぞれの組成成分の該当を明らかにして判断ができるようにしています。

穀類ではアルコール以外の成分が検出可能だったり、魚介類や肉類には食物繊維がないなどの分類がなされています。これらの情報によって、組成成分の含有量によって総エネルギー量が算出できます。食品に含まれるものは多くのものがあり、多岐にわたる分析が必要となります。

統一した分析のためには、日本食品標準成分表分析マニュアルが欠かせません。

遺伝子組み換えに関する食品分析

食材の効率的な生産を考えたときに、有効な手段として考えられたのが遺伝子組み換えです。遺伝子レベルで操作することで、育てやすく強い食材を作ることができます。それまで行われてきた品種改良とは異なり、人の技術によって生み出した食材は、人体への影響が不明なため安全性に疑問があります。

そのため利用している場合は、その旨を表示しなければなりません。その検査や分析の方法を規定したのが遺伝子組換え食品検査・分析マニュアルです。

すべての遺伝子組み換え食品が危険なわけではなく、安全性を確認されてるものも存在しています。それらを明らかにする検査方法については、消費者庁が安全性審査済みの遺伝子組換え食品の検査方法について通知を発出しています。

この検査によって得られたデータによって、適切に表示することが製造者に義務付けられています。

食材不足の問題は今後も増えていくことから、遺伝子組み換えの必要性が高まることが予想され、このような検査の重要性は大きくなっていくでしょう。

(宮崎でおすすめの食品分析センター)

食品添加物分析法

世界ではそれぞれの国で使用して良い食品添加物を規制してます。日本でも当然そのような規制があり、指定されていない添加物が使用されている食品は、製造や輸入が禁じられています。厚生労働省は分析のマニュアルとして食品中の食品添加物分析法という通知を発出しています。

最終改正は令和元年の6月で臭素酸カリウムの分析法が変更されたことと過酸化ベンゾイル分析法などの新たな分析方法が設定されています。その他の分析方法として指定外添加物に係る試験法についても、通知が別に存在します。

例えば食品中のメラミンの試験法についてやナイシンZの分析方法についてなどがあります。これらの通知に従い不適切な添加物が含まれていないことを確実にしなければいけません。特に輸入製品は規制の違いにより、使用量が基準を超えているようなケースが多く見られます。

それによって被害を被るのは消費者なので、健康被害を発生させないためにも、しっかりとした検査の実施が重要です。

食の安全のための食品分析

食材の生産方法が進化して、より効率よく行われるようになるのは仕方がないことですが、それによって有害な成分が含まれてしまうことがあっては本末転倒です。そのような食品が流通しないようにするためには、統一された基準と方法によって実施される食品分析が欠かせません。

今後も新たな生産方法が生み出されるたびに、その基準や方法も追従して進化していくことでしょう。